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リーン・ヴォートラン、彫刻作品のように

リーン・ヴォートラン 《ブローチ》
1948年頃 エナメル彩、金色ブロンズ 個人蔵
リーン・ヴォートラン 《ブローチ》
1948年頃 エナメル彩、金色ブロンズ 個人蔵

たとえば、リーン・ヴォートランは、古代文明、詩、聖書、あるいは独創的な着想をもとに、不思議で詩的なコスチュームジュエリーを手がけた。ヴォートランは、幼少期から夢想に浸り、木製のボールに彫刻をするなど、身近なもので創作を行っている。また、金属鋳造職人の家に生まれたことから、早くから鋳造技術を身に付けて自然にコスチュームジュエリーの制作を始めていた。

エデンの園、魚や十字架などをモチーフとしたメタルアクセサリーは、木彫を彷彿とさせる、ふっくらと温かみのある造形が特徴だ。また、金属ばかりでなく、セルロースとレジンを組み合わせた独自の素材を使うなど、素材自体にもこだわりを見ることができる。

リダ・コッポ、洗練された色彩と大胆な量感

コッポラ・エ・トッポ 《チョーカー「花火」》 デザイン:リダ・コッポラ
1968年 クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル 小瀧千佐子蔵
コッポラ・エ・トッポ 《チョーカー「花火」》 デザイン:リダ・コッポラ
1968年 クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル 小瀧千佐子蔵

一方、イタリア出身で、「コッポラ・エ・トッポ」社を設立したリダ・コッポラは、ヴェネチアンビーズといったイタリアの素材を好んで用い、洗練された色彩のコスチュームジュエリーを制作している。

リダは、1950年代には真鍮の上にビーズをセットしてグラデーションを織りなすコスチュームジュエリーを手がけていた。そして次第に、大量のクリスタルビーズを使ったオートクチュール向けの作品の制作へと移行している。そのコスチュームジュエリー作品は、大胆なボリューム感を備えながらも、着用者に寄り添うしなやかさも持ち合わせている点が特徴だ。

アメリカにおけるコスチュームジュエリー

トリファリ 《ペアクリップ「ペーターとヘレン」》 デザイン:アルフレッド・フィリップ
1939年 エナメル彩メタル、ラインストーン、クリスタルガラス 小瀧千佐子蔵
トリファリ 《ペアクリップ「ペーターとヘレン」》 デザイン:アルフレッド・フィリップ
1939年 エナメル彩メタル、ラインストーン、クリスタルガラス 小瀧千佐子蔵

第3章では、アメリカにおけるコスチュームジュエリーを紹介。宝飾品の伝統を持つヨーロッパにおいて、コスチュームジュエリーは当初、ファインジュエリーの代替品と見なされていた。しかしアメリカでは、こうした伝統が存在しなかったため、コスチュームジュエリーはより受け入れられやすかった。実際、シャネルとスキャパレリは戦前から、コスチュームジュエリーをアメリカへと輸出している。

アイゼンバーグ&サンズ 《ブローチ「V」モチーフ》
1941年 クリスタルガラス、メタル 小瀧千佐子蔵
アイゼンバーグ&サンズ 《ブローチ「V」モチーフ》
1941年 クリスタルガラス、メタル 小瀧千佐子蔵

こうして、パリの影響のもとでコスチュームジュエリーが浸透したアメリカでは、次第にヨーロッパの模倣から離れ、アメリカ独自の製品が作られるようになった。この頃、大企業が大量生産する、安価なコスチュームジュエリーが広く受け入れられている。その背景として、ハリウッド映画に登場する女優のスタイルが人気を集めたという点を挙げることができる。

コロ・クラフト 《ブローチ「コルヌコピア」》 デザイン:アドルフ・カッツ
1944年 ルーサイト、エナメル彩、ラインストーン、シルバー 小瀧千佐子蔵
コロ・クラフト 《ブローチ「コルヌコピア」》 デザイン:アドルフ・カッツ
1944年 ルーサイト、エナメル彩、ラインストーン、シルバー 小瀧千佐子蔵

アメリカが、ヨーロッパのような長い宝飾文化の伝統を有していないということは、コスチュームジュエリーの素材の多様性にも表れている。実際に本展でも、コルクや木の実などを用いたコスチュームジュエリーすら目にすることができる。

ミリアム・ハスケル 《ネックレス》 デザイン:フランク・ヘス
1950年代 模造パール、シトリン、ガラスペースト、メタル 小瀧千佐子蔵
ミリアム・ハスケル 《ネックレス》 デザイン:フランク・ヘス
1950年代 模造パール、シトリン、ガラスペースト、メタル 小瀧千佐子蔵

アメリカのコスチュームジュエリーの展開で重要な位置を占めるのが、ミリアム・ハスケルだ。ハルケルは、シャネルに憧れ、ニューヨークでコスチュームジュエリー店を開業。そこでチーフデザイナーとして活躍したのが、フランク・ヘスである。ヘスは、花や葉、蝶といった自然のモチーフの立体表現を得意とし、接着剤を用いず、ワイヤーワークによって精緻なコスチュームジュエリーを手がけている。

今日に伝わるコスチュームジュエリー

シス(シシィ・ゾルトフスカ) 《ネックレス》 制作:メゾン・シス
1950年代 クリスタルガラス、メタル 小瀧千佐子蔵
シス(シシィ・ゾルトフスカ) 《ネックレス》 制作:メゾン・シス
1950年代 クリスタルガラス、メタル 小瀧千佐子蔵

コスチュームジュエリーは、金やダイヤモンドのように、素材そのものに価値があるわけではない。衣服との相性を重視して生みだされているため、装いの移ろいやすさに呼応して、流行が過ぎ去ればともに消え去る定めにある。それでもなお今日へと伝えられているジュエリーの数々からは、そのデザインを手がけた人々の独創性を垣間見ることができるだろう。

展覧会概要

開館20周年記念展「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより」
会期:2023年10月7日(土)〜12月17日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル 4F
開館時間:10:00〜18:00
※11月10日(金)、12月1日(金)・15日(金)・16日(土)は20:00まで開館
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:水曜日(12月13日(水)は開館)
入館料:一般 1,200円、65歳以上 1,100円、高校・大学生 700円、中学生以下 無料
※障がい者手帳の提示者および付添者1名まで入館無料

■巡回情報
京都文化博物館
会期:2024年2月17日(土)~4月14日(日)
住所:京都府京都市中京区三条高倉
愛知県美術館
会期:2024年4月26日(金)〜6月30日(日)
住所:愛知県名古屋市東区東桜1-13-2
・宇都宮美術館
会期:2024年9月8日(日)〜12月15日(日)
住所:栃木県宇都宮市長岡町1077
・札幌芸術の森美術館
会期(予定):2025年4月19日(土)〜6月22日(日)
住所:北海道札幌市南区芸術の森2-75

※画像写真の無断転載を禁ずる。

【問い合わせ先】
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

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